朝日が差し込む窓辺で、いつものようにコーヒーを飲んでいる。
10年前と変わらない光景だけど、時の流れを感じる。
隣では、すっかり大人になったモカがのんびりと寝そべっている。
年を重ねて動きは少しスローになったけど、相変わらず愛らしい姿だ。
「モカ、おはよう」
そっと声をかけるとモカはゆっくりと顔を上げて尻尾を振った。
大きな黒目は10年前と変わらずキラキラと輝いている。
「今日もキミはかわいいね。」
10年の月日は私たちの生活にも変化をもたらした。
私は仕事では管理職になり責任は重くなったけど、モカのおかげでストレス解消の術を覚えた。
なんだかんだ今の仕事は好きだし、がんばってきてよかったと思ってる。
毎朝の散歩は以前より短い距離になった。
モカの足腰を考えてゆっくりペースで歩く。
距離は短くなっても隣にいられる時間が増えて幸せは増えているみたい。
この時間が一日の中で最も大切な瞬間だ。
「ねえモカ、今日はどっち回りで行く?」
モカはまるで理解したかのように右側を向いた。
年を重ねて賢くなったのか、それとも私がモカの仕草を読み取れるようになったのか。
まぁ、どっちでもいいか、仲良しだから。
モカが来てから私の生活は想像以上に豊かになった。
以前は仕事ばかりだった私も、今では人生の優先順位が変わった。
モカとの時間を大切にしながら、仕事とプライベートのバランスを取れるようになった。
休日にはモカの体調と相談しながら、近場でピクニックを楽しむことも。
モカの穏やかな表情を見ていると心が落ち着く。
何よりモカは10年間ずっと変わらない愛情を注いでくれた。
良い時も悪い時も、常に側にいてくれる存在。
モカがいるから、この家が「心の拠り所」になったんだ。
「ねえモカ、今度の休みは庭でゆっくりしようか?」
モカの顔を覗き込むと、ゆったりと目を細めて返事をする。
まだまだ一緒に過ごせる時間はたくさんある。
新しい発見やゆっくりとした時間の過ごし方。
モカと一緒ならどんな日常も特別な思い出になる。
頭上には穏やかな秋の空が広がっている。
「今日はいい天気だね。」
モカをそっと抱き上げる。
これからもモカとの日々を大切に過ごしていこう。
一緒に歳を重ねて、もっともっと深い絆を築いていけたらいいな。
夕方、ソファでくつろいでいるとモカが膝の上に乗ってきた。
少し痩せたけど、柔らかな毛並みは変わらない。撫でながら、ふと思う。
「モカ、これからもずっと一緒だよ。お互い年とったけど、ゆっくり楽しもうね」
モカは、まるで分かったかのように小さく頷いた。
あれ?まだ私若いはずだけど?年取ったってところに同意した?
モカをくしゃくしゃに撫でまわした。
明日からも、明後日からも、そしてこれからも。
モカと一緒に過ごせる日々が続くんだ。
そう思うと、静かな幸福感に包まれる。
「モカ、大好きだよ」
そっと呟くとモカは目を細めて私を見上げた。
キミは相変わらずかわいいね。
この瞬間、この穏やかな幸せがまだまだ続くことを願いながら、私はモカをそっと抱きしめた。
10年前と変わらない、でも更に深まった愛情を感じながら。
でも、11年目が来ることはなかった。
コメントを残す