6/6「虹の橋の向こう側:愛犬からのメッセージに出会えた日」

時が経つのは早いもので、モカがいなくなってから1年以上が過ぎていた。
少しずつだが、欠けた日常に慣れてきた。


最初の頃は、毎日が地獄のようだった。
モカのいない家は静寂に包まれ、生きる意味さえ見出せなかった。

でも、友人たちの支えや、同じような経験をした人々との交流を通じて、少しずつ前を向く勇気が湧いてきた。


犬の散歩をしている人を見ても、以前のように胸が締め付けられることはなくなっていた。
もうほとんど変われたのかもしれない。

ペットロスを完全に克服したとは言えないけど、楽しいと思える瞬間も増えてきた。
料理を始めてみたり、ガーデニングにも挑戦してみた。
小さな成功や発見が、少しずつ私の心を癒してくれた。


もちろん、モカのことは忘れていない。
むしろ、あの時間があったから今の私がいる。
そう思えるようになったのは大きな進歩だった。


友人とも会って楽しい時間を過ごせるようになった。
最近の近状報告もした。
笑いながら話せる自分に、少し驚きさえ感じた。


でも、そんな中でふと不安がよぎった。
なんだか私だけがどんどん変わっているみたいで、そこがひっかかる。

モカが見たら悲しむかな?
あの時の私とちょっと違うからびっくりするかな?


あと一歩なのはわかる。
わかっている。

でも、私だけが進んでいて、モカはあの日のまま。
この事実が時々胸に重くのしかかる。


モカの気持ちが知りたい。
こんな私でもいいよね?
ちょっと変わっちゃったけどわかってくれるよね?
応援してくれるよね?


モカへの思いや、変わりつつある自分への不安を正直に打ち明けた。

友人はいつものように真剣に聞いてくれた後、突然「モカの気持ち聞いてみよう!」と言い出した。

「???」

私は驚いて友人を見つめた。
どうやら占いでペットの気持ちを伝えてもらえるらしい。
確かに前にネットで交流した人も言っていたのを思い出した。

モカの気持ちを聞く。
その言葉を聞いた瞬間、鼓動が早くなって汗が出る感覚があった。

ちょっと怖い、けど知りたい。
でも怖い。

この葛藤が激しく心を揺さぶる。

でも、私がひっかかっている部分を解決できるかもとも思った。
ちゃんとモカに応援してもらいたかった。


「・・・・やってみようかな」


そう言葉に出した時、自分の中で何かが動いた気がした。

友人には本当に感謝だ。
なんだかんだ色々私のことを考えてくれている。

いつも気にかけて連絡くれたり、メモリアルネックレスを教えてくれたり、家に遊びに来てくれたり。
モカと何度も遊んでいるし、あの時一緒に大泣きしてくれたし。
だから今回もきっと色々調べてくれたんだろう。

「いつもありがとうね。・・・・このお店の食事代くらいはおごらせてよ」

そう言って笑う私に、わざとらしく財布をバッグにしまう友人の仕草もどこか面白くて笑えた。
いい友人にも支えられて幸せだ。



家に帰って、しばらく躊躇した後、やっと決心がついた。
早速モカの気持ちを知ってみようとスマホを手にした。
深呼吸をして、占いのサイトを開く。
モカの気持ちを聞こう。

そして、新しい一歩を踏み出す準備が整った。


占い師さんの優しい声が電話越しに聞こえてきた。
緊張しながらも、その声に導かれるままモカとの思い出を語り始めた。


最初は言葉が詰まりがちだったけど、だんだんと思い出が溢れ出してきた。
楽しかったこと、嬉しかったこと。

話していくうちに、そのすべてが私の人生をどれほど豊かにしてくれたか改めて気づかされた。


ずっとこらえていた感情も我慢せずに話せた。
不思議なことに、泣きそうになると思っていたのに、穏やかな気持ちで思い出を語ることができた。


そして最後の質問が来た。

「モカちゃんに、今、伝えたいことはありますか?」

スマホを握ったまま、しばらく言葉が出てこなかった。
でも、少しずつ、言葉が溢れ出てきた。


「モカ、10年間ありがとう。あなたがいてくれて私はこんなに幸せだったよ。今はとても寂しいけど、あなたとの思い出は私の宝物だからね。私は・・・もう多分大丈夫。安らかに眠ってね」


言葉を紡ぎながら、不思議な感覚に包まれた。
まるで目の前にモカがいるかのように、でも同時に、これが大切な思い出になっているんだという実感。

言い終えた瞬間、不思議と心が軽くなるのを感じた。


そして、占い師さんを通じて、モカからのメッセージを受け取った。
その内容は私とモカ二人だけの大切な思い出として、ここでは控えさせてもらうけど、モカの愛情と励ましが伝わってきて、胸が熱くなった。

通話を切った後、ほわっとした不思議な感覚に包まれた。
やっぱり涙が頬を伝うけど、今回の涙は苦しいものじゃなかった。

モカが最後の最後まで私のことを想ってくれていたんだと思うと、心の中にあった重たい霧が、少しずつ晴れていくのを感じた。

窓の外を見ると、雨が上がって薄日が差し始めていた。
「よし、今日は久しぶりに、公園に行ってみようかな」 そう思い立って、久しぶりに外出の準備を始めた。

鏡に映る自分の顔に、小さな笑顔が戻っているのに気づいた。

「相変わらずキミはかわいいね。」

自分でもわかるくらい、私の目はモカのように生き生きとしていた。

公園に向かいながら、この占いの経験について考えた。
占いが本当かどうかは実はどうでもいい。
でも、これがペットロスの区切りとして、私にとってとても重要な出来事だったのは間違いない。


死んでしまったペットの気持ちを本当に知ることはできない。
でも、こういう形で向き合う機会を得られたことが大きな一歩になった。


そう考えると、占いってペットロスのような答えのないトンネルの中にいる人に、光を与えてくれる一つのきっかけになるんだなと思った。

その瞬間、あることを思いついた。
モカとの経験をブログにしてみたいと。

ペットロスでずっと苦しんでいる人が、きっとこの世の中にはたくさんいるはず。
その人たちの支えのきっかけになれるように。

忘れることは悪いことじゃない。
でも、忘れちゃいけない。

そして、ずっとペットロス状態でいることも、悲しいけど良くない。

前に進むことを決めよう。
それは、きっと亡くなった子に対しての愛でもあるんだから。

私はもう泣かない。
モカと一緒に生きているって実感できている。
写真もほら、見られるようになった。大丈夫。



公園に着いて、ベンチに腰掛けた。
そこから見える景色は、モカと一緒に見ていた景色と同じなのに、何か違って見える。
新しい希望に満ちているような気がした。


これからも辛いことはあるだろう。
でも、モカとの10年間があったから私は強くなれた。

そして、モカはいつも私を見守ってくれている。

この経験を同じように苦しんでいる人たちと分かち合いたい。
それが、モカへの恩返しになるんじゃないかな。


「モカ、ありがとう。これからも一緒だよ」


そう心の中で呟きながら、私は新しい一歩を踏み出した。
モカとの思い出を胸に、そして未来への希望を抱いて。

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